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パーキンソン病について



はじめに


パーキンソン病は中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が何らかの原因で少なくなり、身体の運動の調節などに関係しているドパミンという物質が不足することにより発症します。
1817 年にイギリス人外科医であるJames Parkinsonが初めて報告し、その名前にちなんでパーキンソン病と呼ばれるようになりました。
パーキンソン病はアルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い神経変性疾患で、運動の不調をきたす神経変性疾患としては最も多く、
厚生労働省が2022年6月に公表した「令和2年(2020)患者調査」では、国内で継続的に治療を受けている患者の数は28万9000人と報告されています。
パーキンソン病は50~65歳に発症することが多いですが、高齢になるほど発病率が増加するため、人口高齢化が進む中で患者数は世界的に急増しています。
日本でも患者数は増加しており2018年度末には特定疾患の中で潰瘍性大腸炎を抜いて最多の疾患となりました。
特に高齢パーキンソン病患者さんが急増しており、65歳以上の方では100人に1人の頻度の病気であることが示されています。


症状について

パーキンソン病にみられる代表的な4つの症状は、運動緩慢、振戦、筋強剛、姿勢保持(反射)障害です。
これらの運動症状は、左右どちらかの側から出現し、両側になったとしても、左右どちらかの症状がより強いというのが一般的な特徴です。
近年、これらの運動に関係した症状に加え、様々な非運動症状(精神症状、自律神経障害、感覚障害、睡眠障害など)を呈することも明らかになりました。
非運動症状の中には運動の不調をきたす前から認められる症状(うつ、便秘、嗅覚障害、レム睡眠行動異常症)もあり、パーキンソン病の早期診断という観点からも注目されています。
しかし、これらの症状が全ての患者さんでみられるわけではなく、症状や経過に個人差が大きい病気です。


運動症状


運動緩慢・無動

動作が遅くなり、運動の大きさ(振幅)や量が減ってしまう症状です。症状がより高度になった状態を無動といいます。
歩行・起き上がり・立ち上がり・寝返りなど様々な日常動作が障害されます。例えば、歩くのが遅くなったり、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、食事動作、着脱衣、寝返りなどに支障をきたすことがあります。
瞬きが少なく、仮面をかぶっているような表情のない顔つき(仮面様顔貌)、小声で単調な抑揚のない話し方になります。
以前に比べて字が下手になり、書くにしたがって文字が小さくなること(小字症)や、症状の進行に伴い食事の咀嚼や飲み込みが遅く下手になるなどの症状がみられることもあります。

振戦(しんせん)

手、足、あごや頭部に起こる「ふるえ」のことです。左右どちらかにより強いのが一般的です。ふるえがみられる病気は多くありますが、パーキンソン病のふるえは、膝の上に手を置いてリラックスしている時など安静にしていて動作をしていない時に強くふるえ、動作をすると軽くなったり、消失したりするのが特徴です。
丸薬を丸めているような指の動きが特徴です(pill rolling tremorと言います)。振戦を認めないパーキンソン病の方もいます。

筋強剛(きんきょうごう)

筋肉の緊張が高まっている状態で、関節を曲げ伸ばしした際に抵抗を感じ、固く感じられます。患者さんご自身は気が付きにくい症状です。
カクカクと歯車のように抵抗を感じることもあれば、鉛の管を曲げるように一定の抵抗を感じる時もあります。手足だけではなく、頸部や胴体部分にも出現します。

姿勢保持障害

人間の体は、倒れそうになると倒れないために姿勢を反射的に直す反応が備わっています。しかし、パーキンソン病患者さんでは、前方や後方に軽く押されただけで体勢を立て直せずに突進したり倒れたりしてしまうことがあります。
立ち上がった時、歩いている時や方向転換時に倒れやすくなります。通常、病気の初期には認めず、他の症状にて発症してから数年経過した頃にみられるようになります。

歩行障害

歩行が遅く、歩幅が狭く、自然な腕の振りが減ってしまいます。膝を曲げ前屈みの姿勢で小刻みに歩きます。
また、足がなかなか前に出ない(すくみ足)、歩き出すと早足となってしまい止まることができない(加速歩行)といった症状がみられます。
すくみ足は歩き始めや方向転換時に強く出やすく、歩幅にあった横線などの模様が床や地面に描いてあると、それをまたぎながら歩くことでスムーズに足がでるようになることがあります。

姿勢異常

筋強剛、ジストニア、筋力低下、固有感覚の障害などにより、比較的病初期から前傾姿勢、進行期には腰曲がり、首下がり、斜め徴候といった姿勢異常が目立つようになることがあります。

非運動症状



精神症状

抑うつ、アパシー(無気力、無関心)、不安、パニック発作がみられる場合があります。抑うつ症状が病初期から強く、精神科を最初に訪れることもあります。病気の進行期には幻覚(特に幻視が多い)、妄想を認めることがあります。
また、物事をスムーズに行えなくなる遂行機能障害、注意障害、視空間認知障害などの認知機能障害を呈することもあります。
主に薬の副作用で病的賭博や性欲亢進、買い物依存、過食などの衝動制御障害が出現することもあります。

自律神経障害

便秘が最も多い症状ですが、排尿障害(頻尿が多い)、起立性低血圧(立ちあがった時に血圧が下がってしまいたちくらみがしたり、ひどい時には失神したりすることもあります)、発汗過多、インポテンスなどの症状があります。

感覚障害

嗅覚障害、痛みが出現することがあります。
嗅覚障害は高頻度で認められる症状ですが、患者さんは自覚していないことも多く、検査をして初めて気づくことも多いです。

睡眠障害

不眠、日中の眠気、むずむず脚症候群、レム睡眠行動障害(寝ている最中に大声を上げる、手足をバタつかせる)など多彩な症状が出現します。
日中の眠気、突発的睡眠(予兆なく突然寝入ってしまう)はパーキンソン病自体の症状であると共に、パーキンソン病に対する薬の副作用で出現することもあります。

運動合併症



発症して数年が経つと、抗パーキンソン病薬(L-ドパ)の効いている時間が短くなり薬がきれる感じを自覚するようになります。
薬が効いている時間(オン)と効いていない時間(オフ)で症状の差を感じるようになるということです。
そのような薬の効果持続時間の短縮による症状の日内変動をウェアリングオフ現象といいます。また、主に抗パーキンソン病薬の血中濃度が高い時に出現する体をくねらせるような不随意運動をジスキネジア(peak-doseジスキネジア)といいます。ウェアリングオフ現象とジスキネジアをまとめて運動合併症といい、これらを認めるようなった患者さんを進行期と呼ぶのが一般的です。

重症度分類


パーキンソン病の症状の重症度分類としてはヤールの重症度分類が用いられます。

重症度 主な症状および必要な介助状況
Stage I 片側の手足だけに振戦や筋強剛を示す。日常生活にほとんど介助を要さない。
Stage Ⅱ 両側に症状がみられ、姿勢の変化がかなり明確となる。日常生活がやや不便である。
Stage Ⅲ 明らかな歩行障害がみられ、方向転換の不安定など立ち直り反射障害がある。
日常生活の動作にもかなり障害がみられ、一部介助が必要となる。
Stage Ⅳ 起立や歩行など日常生活の動作が非常に困難となり、介助が必要となる。
Stage Ⅴ 自力での日常生活動作は難しく、介助による車椅子での移動またはベッド上の生活が中心となる。
日常生活では全面的な介助を必要とする。
参照元
難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
慶応義塾大学病院パーキンソン病センター

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